30
群馬から世界へ、
唯一無二のパティシエ道
株式会社パリ・ドートンヌ
代表取締役
川村 浩二
群馬県出身。フランスと日本の名店で研鑽を積んだ後、2016年に群馬県に「パリ・ドートンヌ」を創業。法人設立後、自店舗のほか結婚式場での引菓子や洋菓子の製造・販売を手掛けつつ、ECサイトの運営やプロデュース業にも進出している。
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群馬から世界へ、唯一無二のパティシエ道
株式会社パリ・ドートンヌ 代表取締役
川村 浩二
群馬県出身。フランスと日本の名店で研鑽を積んだ後、2016年に群馬県に「パリ・ドートンヌ」を創業。法人設立後、自店舗のほか結婚式場での引菓子や洋菓子の製造・販売を手掛けつつ、ECサイトの運営やプロデュース業にも進出している。
600回の素振りで得た克己心
埼玉県で生まれましたが、小学3年生のときに群馬県に引っ越しました。転校生として新しい環境に慣れつつ、スポーツに打ち込んだ日々を過ごし、特に野球では努力が私の根幹を作ったと感じています。高校時代、試合に出られない悔しさをバネに、毎日素振りを300回、最終的には600回にまで増やして、自分にだけは負けないという強い意志を育てました。結果は思うように出ませんでしたが、この経験が今の私を支えてくれています。
卒業後はアーティスティックな製菓の道へ進もうと決意。製菓学校で学び、日本の有名なパティスリーで5年間の修行を経て、フランスへ渡り、3つの店舗でさらに腕を磨きました。帰国後は高級ホテルでの勤務を経て、地元群馬で「株式会社パリ・ドートンヌ」を立ち上げました。
私がパティシエとして大切にしているのは、技術だけでなく、お客様をはじめとした皆様とのつながりです。特に結婚式場向けの引菓子や人気の「プレミアムエクレア」は、私の経験と情熱を込めた商品であり、私が手がけたものを手に取り、食べていただいて広がっていくお客様の笑顔が私の喜びです。
最悪な労働環境で世界一を目指せ
社会に出てから、最初に働いた職場では想像を超える激務を経験しました。毎日わずか4時間の自由時間しかなく、その中で食事、睡眠、入浴を済ませ、再び職場に戻る日々。時には厨房の作業台で仮眠をとることもありました。ストレスが限界に達し、ついに両方の肺に穴が開いてしまったこともあります。それでも5日間の入院後、すぐに職場に戻り、再び激務をこなしました。労働条件は劣悪で、給与は時給200円にも満たない状態。それでも、私は休まずに働き続けました。
決して美談にしたいというわけではありません。しかしこの経験は私に「負けない覚悟」を教えてくれました。寝不足のなかアメ細工の世界大会に挑戦するために、毎日1時間だけ自分と向き合う時間を作り、技術を磨きました。結果として夢は叶いませんでしたが、その過程で培った自己鍛錬と情熱は、今の仕事に大きく影響しています。そして、そんな厳しい環境を自分の意志で突破したからこそ、現在の「パリ・ドートンヌ」でお客様が満足していただける商品の質を提供できているのだと自負しています。
今もその価値観は自分に宿っています。自社ホームページ作成から、自店のメニューやインスタグラムに投稿する写真の撮影/現像、YouTubeに投稿する動画の撮影/編集、楽天市場などのページづくりなどはすべて私一人でおこなっています。外注せず自分でなんでもできるように、社会で活躍できるスキルはつねに身につけていきたいですね。
群馬は挑戦に最適な地
現在注力しているのは、自社ブランドの強化と新規事業のプロデュースです。例えば現在、大阪府堺市では生ドーナツのお店をプロデュースし、事業立ち上げからディレクションまでフォローしています。今後は店舗・EC・卸の3本柱をさらに強化し、「パリ・ドートンヌ」のブランドを日本全国、そして世界へと広めていくことを目標にしています。
実は、開業してからも苦難は続きました。大きな契約が一気になくなってしまったり、せっかく良い立地に出店できたと思ったらコロナ禍に直撃したり…。でも、そんな折々に、周りの方々から手を差し伸べてくださって、今に至ります。
もちろんお力添えいただくばかりではありません。例えば先述の生ドーナツプロデュースの件は、以前からつながりのあった群馬の方からお話をいただいたのがきっかけです。状況を聞いて「ぜひ力になりたい」と思い、本業と同様に心血を注いで展開をしております。拠点にしている群馬県で事業をおこなって良かったと感じるのは、まさにそういった自由さ、県民同士の距離の近さです。群馬は都会と違って、挑戦を応援してくれる仲間とのつながりを感じることが多く、何より自然に囲まれた環境がクリエイティブな発想を助けてくれます。まさに自分のイメージを形にするのにうってつけなんです。
これからも「パリ・ドートンヌ」は、群馬の地から全国へ、美味しいスイーツを届けるだけでなく、新しいビジネスの形を発信していきます。また、群馬の魅力を伝えながら、世界に誇れるブランドへと成長させていきたいと考えています。