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地域に根ざした伝統と挑戦
シャンゴ株式会社
代表取締役
関﨑 晴五
群馬県出身。東京調理師専門学校、東京ホテル レストランカレッジ卒業。南麻布のレストラン「イ・ピゼッリ」に入社。イタリアへ渡り、本場のイタリアンを学ぶ。帰国後、麻布十番クチーナヒラタを経て、父親の経営していたシャンゴ株式会社へ入社した。2011年、シャンゴ代表取締役に就任し、現在に至る。司厨士協会ブロンズメダル受賞。
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地域に根ざした伝統と挑戦
シャンゴ株式会社 代表取締役
関﨑 晴五
群馬県出身。東京調理師専門学校、東京ホテル レストランカレッジ卒業。南麻布のレストラン「イ・ピゼッリ」に入社。イタリアへ渡り、本場のイタリアンを学ぶ。帰国後、麻布十番クチーナヒラタを経て、父親の経営していたシャンゴ株式会社へ入社した。2011年、シャンゴ代表取締役に就任し、現在に至る。司厨士協会ブロンズメダル受賞。
受け継がれるシャンゴの想い
当社は、群馬県内に7店舗を展開するイタリアンレストラン「シャンゴ」を運営しています。その始まりは、1968年に父である関﨑省一郎が、請地町で「イタリアンキッチンシャンゴ」を開店したことです。私自身、幼い頃から父やキッチンの職人たちに囲まれて育ちました。学校から帰ると、白衣にコック帽姿の職人さんたちがまるでヒーローのように映り、彼らに遊んでもらうのが日常でした。職人たちが作り出す料理とその姿は、今も私の心に強く残っています。
調理師専門学校を卒業後、私は都内のレストランで経験を積みながら、一度イタリアに渡り、3年間本場の味と技術を学びました。そして27歳のときに群馬に戻り、シャンゴに入社。東京やイタリアで培った新しいアイデアを活かしたい気持ちが強かった一方で、昔ながらのやり方を大切にする職人さんたちや、地元のお客様が求めるものとの間で葛藤がありました。ですが、父や現場のシェフと何度も話し合いを重ね、彼らの経験や思いを理解しながら、新しい風を取り入れる方法を模索しました。
父が倒れたのは本当に突然のことでした。そして数日後には、会社を引き継ぐという重大な決断が必要になりました。父が残し、そして歴代のシェフたちが築き守り続けてきたこの店で、これからも地元のお客様に愛され続けてもらうために、私は強い決意でシャンゴの継続に取り組みました。プレッシャーも大きかったですが、目の前のことに必死に取り組み続け、先輩シェフたちとの信頼関係を築き、そして地元のお客様から温かい支えをいただいたおかげで、今もシャンゴは継続できていると言っても過言ではありません。
“群馬の食”をつくるために
群馬県は小麦の生産地として全国でも有数で、地域には幅広い粉食文化が根付いています。創業者である父はシャンゴの開業当初から「パスタは必ず群馬県の人々に受け入れられる」と確信を持っていたと聞いています。私自身も、群馬県産や高崎産の農産物・畜産物を積極的にメニューに取り入れています。
イタリアでは「ワインとオリーブ油は旅をしない 」と言われています。地元のワインをこよなく愛し、地元のオリーブ油にこだわって料理する。イタリア修行時代にこのことばを耳にし、そして目の当たりにした私が、生まれ育った群馬県でも食を通じた地元愛を表現したい、そう考えたゆえの結果です。
とくに我々のような、いわゆるローカルチェーンは、地元生産者の方々との情報共有やコミュニケーションを重視し、信頼関係を築くことが重要だと感じています。地元のお客様に愛され続けるためには、地産地消を推進し、地域との結びつきを大切にすることがポイントです。
現在注力していることは、さまざまな角度から群馬県内の生産者様と協業していくことです。情報化社会で様々な情報がタイムリーに収集できる世の中とはいえ、ものを提供する立場として、最後は自分の目で確かめなければなりません。毎回現地に出向いて生産者の方と話すと、ものづくりに対する愛情、情熱をいただきます。大小関係なく、私たちが「これは美味しい!」とすなおに感じたものを、そして生産者の熱い想いが宿るものをメニュー化することで、シャンゴが生産者とお客様との距離が少しでも縮められるプラットフォームとなれればと考えています。
料理は「基本に忠実に丁寧に」
料理人として重要なのは「基本」と「個性」のバランスを日々磨き続けること、私はそう思っています。全ての料理において、ただ材料を切る、焼くという技術的な側面だけではなく、各動作に込められた目的やその意味を深く理解することが求められるということです。どんな料理にも「やればいい」というものは存在せず、それぞれに意味や目的があります。そのため、生涯を通じて知識やスキルを磨き続ける姿勢が、真の料理人としての道だと考えています。
また、料理においては「基本」をしっかりと守るだけでなく、同時に「個性」を尊重し、自分自身の感性を反映させることも大切です。個性とは、単に型破りなことをするのではなく、料理の本質を理解したうえで自分らしさをどう表現するかにかかっています。基本に忠実でありながら、そこに自分の色をどう加えるか。これこそが、料理に魂を込め、食べる人に感動を与えるために重要だと感じています。
とはいえ、自分らしさとは、料理の本質とは何なのか?そんなことを他人に聞いても、答えはてんでバラバラです。さらには自分の考えが反映されることなんてそんなに多くはありませんし、理不尽なものごとにさらされることだってしばしばあります。私も若いうちは「本当にこの仕事でやっていけるのか…?」と迷っていた時期がありました。ただ、失敗してもその事実を真摯に受け止め、その原因を突き止め、克服するために対策を講じ、次の機会で成功するように準備する。これを続けていくことで、自分らしさ、料理の本質のようなものがだんだんと見えていくようになったと思います。有象無象の「答え」がネット上に漂い、”コスパ”が重要視されがちな今の時代だからこそ、若い方々には自分で挑戦していく姿勢を大切にしてほしいですね。
今後も料理人として、知識を蓄え、技術を磨き、それをどう自分の料理に活かすかを追求し続けていきたいと思います。こうした姿勢で、シャンゴの伝統を守りながら、さらに発展させていくことが私の目指す道です。父の想いを受け継ぎ、地域に根ざしたイタリアンレストランとして、これからもシャンゴを支え、未来へと繋げていきたいと考えています。
今後も料理人として、知識を蓄え、技術を磨き、それをどう自分の料理に活かすかを追求し続けていきたいと思います。こうした姿勢で、シャンゴの伝統を守りながら、さらに発展させていくことが私の目指す道です。父の想いを受け継ぎ、地域に根ざしたイタリアンレストランとして、これからもシャンゴを支え、未来へと繋げていきたいと考えています。