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コンクリート産業からオーディオ業界へ情熱が築いた未来

関口機械販売株式会社
代表取締役

石黒 謙

群馬県伊勢崎市。1988年、関口機械販売入社。1997年に代表取締役に就任し、CD消磁器RD-1を開発販売することで「ACOUTIC REVIVE」ブランドとしてオーディオ周辺機器事業に業種転換。その後画期的なオーディオケーブル・アクセサリーを発表しオーディオ銘機賞やMJ無線と実験のアクセサリー部門を20年以上に渡って独占し、世界2大音楽誌の一つであるフランスDiapason誌での2度の金賞、世界最大のオーディオイベントである独ミュンヘンハイエンドショーにて最も音の良いブースへ贈られるBest Sound Awardを3年連続で受賞するなど世界的に高い評価を受けている。また音楽レーベルも主催し、佐藤俊介バッハ無伴奏ソナタとパルティータはレコードアカデミー賞銀賞と器楽曲部門をダブル受賞した。

https://acousticrevive.jp

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コンクリート産業からオーディオ業界へ情熱が築いた未来

関口機械販売株式会社 代表取締役

石黒 謙

Ishiguro Ken_prof

群馬県伊勢崎市。1988年、関口機械販売入社。1997年に代表取締役に就任し、CD消磁器RD-1を開発販売することで「ACOUTIC REVIVE」ブランドとしてオーディオ周辺機器事業に業種転換。その後画期的なオーディオケーブル・アクセサリーを発表しオーディオ銘機賞やMJ無線と実験のアクセサリー部門を20年以上に渡って独占し、世界2大音楽誌の一つであるフランスDiapason誌での2度の金賞、世界最大のオーディオイベントである独ミュンヘンハイエンドショーにて最も音の良いブースへ贈られるBest Sound Awardを3年連続で受賞するなど世界的に高い評価を受けている。また音楽レーベルも主催し、佐藤俊介バッハ無伴奏ソナタとパルティータはレコードアカデミー賞銀賞と器楽曲部門をダブル受賞した。

https://acousticrevive.jp

オーディオ技術への情熱が生んだ大ヒット商品と新たな道

 当社、関口機械販売株式会社は、現在オーディオ周辺機器メーカーとしてケーブルやアクセサリーなど、世界最大規模の製品数を誇っています。しかし、元々はコンクリートブロックマシンの設計・製造・販売を行う企業でした。

 私が当社に入社したのは20代の頃です。当時、私は何度も転職を繰り返し、何をしてもうまくいかないという状況に直面していました。そんな中で、当社に就職し、コンクリートブロックマシンの開発と製造に情熱を注ぎ、長く腰を据えて働く決意をしていました。しかし、1996年に建設省が護岸コンクリート工事廃止法案を提出し、当社の業績は一気に悪化。北海道本社を含めて20名以上いた社員は、私と前社長を除いて全員リストラされるという厳しい状況に追い込まれました。さらに追い打ちをかけるように、前社長が肺がんで亡くなり、会社は存続の危機に直面しました。

 このままでは家族も会社も守れないと感じ、私は新たな道を模索し、自身の趣味であったオーディオの「音質改善技術」に活路を見出しました。そこで、CD消磁器「RD-1」の開発・販売に挑戦しようと決意したのです。しかし、当時の会社の経営状況が悪かったため、銀行からの融資はことごとく断られました。そこで、私は無断で家を担保に入れるなど、リスクを背負いながらの決断をしました。それでも、長年オーディオに情熱を注いできた私には、「これだけ効果のある製品が売れないはずがない」という強い確信があったのです。 最終的には国民金融公庫から融資を得ることができ、事業転換に成功。CD消磁器「RD-1」は半年で3,000台、累計では50,000台以上を売り上げる大ヒット商品となり、会社の新たな柱となりました。現在、当社はオーディオメーカーとしての地位を確立し、成長を続けています。

Ishiguro Ken_仕事風景

ネットワークオーディオへの挑戦と地元素材の活用

 当社は、CD消磁器「RD-1」から事業をスタートしましたが、音楽業界の変化に伴い、私たちも進化を続けてきました。近年、オーディオのメイン音源はCDからサブスクリプションやストリーミング再生へと移行し、ハイレゾ音楽を手軽に楽しめる時代となりました。しかし、ネットワーク機器のノイズやLANケーブル、USBケーブルの品質が音質に悪影響を与えることもあります。

 そこで当社では、他社に先駆けてネットワーク機器のノイズ対策アクセサリーや、実用新案を取得した独自構造のLANケーブル・USBケーブルを開発・販売し、ストリーミング再生の音質向上に大きく貢献しています。また、アナログレコードの人気が再燃する中で、レコード再生における音質向上を実現するためのケーブルやアクセサリーも数多く開発・販売しています。

 オーディオ機器において、ケーブルやアクセサリーの素材や品質は音質に大きな影響を与えます。そのため、当社では材料の選定から製造に至るまで、すべてMade in Japanにこだわり、特に群馬県内の企業で製造を行っています。地元群馬の特産であるシルクや貴陽石を取り入れた製品もあり、地元の素材を活かせることを大変誇りに思っています。

 「音は誤魔化しが利かない」という信念のもと、材質や加工精度には細心の注意を払い、製品の約半数は私自身が手を動かして組み立てています。また、内職の職人も厳選し、最高峰の品質を提供することに全力を尽くしています。

Ishiguro Ken_設備

若い世代への発信で業界全体の向上を

 今後、若い世代に対してオーディオにおけるクオリティの重要性を広めていきたいと考えています。現在、多くの若者はスマートフォンで音楽を聴くスタイルが主流で、良くてもコンパクトなデジタルオーディオプレーヤーでイヤフォンを使用する程度です。家庭でオーディオ装置を使って音楽を楽しむスタイルは、ライフスタイルの変化や娯楽の多様化により激減しました。

 しかし、オーディオ機器を通じて音楽と向き合うことの大切さ、音質が向上することで音楽の感動が飛躍的に増すという素晴らしさを、私たちオーディオ業界が十分に伝えてこなかったことも大きな要因だと考えています。その結果が音楽ソフトやオーディオ機器の売上減少にもつながっていると言えるでしょう。音楽に対して真剣に向き合う人が減ってしまったことが、音楽業界にもオーディオ業界にも大きく影響したことは間違いありません。

 この数十年で映像技術は8Kなど飛躍的な進化を遂げてきましたが、音質に関しては同じような進化が見られず、むしろ退化したと言っても過言ではありません。映像と音質が高次元で融合してこそ、本当の意味での文明の進化と言えます。音質の重要性を広めることが、弊社の業績向上はもちろん音楽業界やオーディオ業界の発展につながると確信しています。

Ishiguro Ken_看板