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教育現場の「なくてはならない存在」を目指す老舗教材屋の挑戦
株式会社滋野堤水堂
代表取締役
滋野 一馬
群馬県前橋市出身。2006年に法政大学卒業後、株式会社内田洋行に入社。2011年には曽祖父が創業した教材教具の販売を手掛ける株式会社滋野堤水堂に入社。2019年、株式会社滋野堤水堂の代表取締役就任。1933年の創業以来、現場の声に耳を傾け、きめ細やかなサポートを実現してきた滋野堤水堂は、IT化する教育現場においても圧倒的な支持を得ることに成功。教育現場になくてはならない存在へと急成長を遂げている。
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教育現場の「なくてはならない存在」を目指す老舗教材屋の挑戦
株式会社滋野堤水堂 代表取締役
滋野 一馬
群馬県前橋市出身。2006年に法政大学卒業後、株式会社内田洋行に入社。2011年には曽祖父が創業した教材教具の販売を手掛ける株式会社滋野堤水堂に入社。2019年、株式会社滋野堤水堂の代表取締役就任。1933年の創業以来、現場の声に耳を傾け、きめ細やかなサポートを実現してきた滋野堤水堂は、IT化する教育現場においても圧倒的な支持を得ることに成功。教育現場になくてはならない存在へと急成長を遂げている。
「教育インフラ」としての使命
弊社は2024年で創業91年目を迎える教材屋です。創業者である私の曽祖父・滋野隆造は、提灯(ちょうちん)に絵や文字を書く仕事をしておりました。その傍ら、講堂や学校に集まった人々の前で、琵琶を奏でながら美声を響かせ、子どもから大人まで楽しませていたそうです。曽祖父は、このような関わりをきっかけに、教育現場に必要な紙や筆記用具はもちろん、給食で出る昆布のような食品まで、学校で使用する物品はなんでも納入していたと言います。また、その頃の琵琶雅号名を堤水(ていすい)と名乗っていたことから社名も「滋野堤水堂」となり、創業当時の様子を今に伝えております。
当社のメイン事業であった教材備品の販売業務は、理科の実験で使用する実験用試薬や顕微鏡、体育のマットなどのスポーツ用品までありとあらゆる教育機関特化の品々を取り揃えては小・中・高各学校・教育委員会・大学・専門学校等の教育機関を対象に納品しております。その事業規模は群馬県内にとどまり、地域の教育現場を支える一企業として長きに渡り教育機関に携わってきました。
その長年の取り組みの中で当社が大切にしていることは、常に子どもたちのためを想った決断をすることです。子どもたちが心から楽しみ、成長できるためにも、学校をより魅力的な場所にする必要があります。そのためにも先生を支え、学校を支えることで子どもたちが平等に質の高い教育を受けることができると考えております。この状態を実現するための「教育インフラ」であるという使命感をもって販売・サポートに従事しております。
設定に王道なし。答えはいつも現場にある
群馬の一教材屋であった当社が全国規模へ事業拡大する転機となったのが2020年の「GIGAスクール構想」でした。見渡す限りのデジタル製品が広がる現代において、教育現場へのデジタル端末の導入を国が主導するかたちで推し進めるといった未だかつて無い国家プロジェクトが実行されたのです。これにより、当社は全国規模の「パソコンの販売・保守メンテナンス」が売上の80%以上を占めるようになり、長きに渡り会社の主軸であった教材備品の販売業務は今や全体の20%ほどになるといった事業構造の転換を経験しました。
当社のパソコン等のデバイス導入支援が全国規模にまで発展した背景には、各教育現場の課題を精査する能力と、その対策実行において一気通貫した支援サービスを提供できている点にあると考えております。当社のゴールはあくまで「子どもたちが平等に質の高い教育を受けられる環境」をつくるための支援をすることにあります。そのためには、デバイスを納入して終わりではなく、デバイスを使えるように設定する必要があり、それもただ使えるだけでなく、各教育現場におけるデバイスの利用目的を達成するための細かな設定や機能追加までも当社で対応した上で納入させていただいております。また、各デバイス内部の設定だけでなく、その周辺機材を含む環境構築も重要であり、そもそも学校にある機材・設備から足りないものを限られた予算や使用目的によって提案する際の要件定義にも高度なコミュニケーションスキルが求められると考えております。
よくある現場での勘違いには、「大は小を兼ねる」といった理論で、盛りだくさんの機能や使用目的から乖離したオーバースペックな機材の導入などが行われることがあります。さらに先生方の頭を悩ませるのが修理依頼やアカウント管理などの保守メンテンナス業務です。当社は修理依頼や設定変更などのメンテナンス業務も全て一つの窓口で対応させていただいております。よくあるパターンとしては「修理依頼は別会社へ連絡してください」というように窓口が複数化し先生方の業務が煩雑化することです。児童・生徒からの依頼を先生が取りまとめて修理依頼するようなケースもありますが、当社では先生方の業務負担軽減のためにも児童・生徒から直接修理依頼を承れるような体制を構築したりすることも可能です。
このように、教育現場を第一に考え児童・生徒や教員・保護者など様々な視点から提案することで、新規のお取引先を全国規模まで拡大させることができました。教育現場は必ずしも同じ課題をもっていることはなく、むしろ全く異なる要望があります。設定に王道はなく、ただひたすらに声を聴き、最適なサポートを実行するといった創業当初からの姿勢がデジタル化した教育現場でも通用することを証明できたと考えております。
教育現場の「黒子」になる日まで
当社のビジョンに掲げる「ワレラ、マナビヤ、サポーター」を実現するために教育現場になくてはならない存在として皆さんに認識されなければならないと考えております。それは「黒子」のように失って初めてその重要性に気づくほどに教育現場に溶け込んだサービスを提供し、教育機関や先生方が円滑に教育活動に専念できる環境を提供していきたと考えております。そのためにも、現場で求められる物品や技術を高いレベルで取り扱うことができる体制を整えていきたいと考えています。
そして群馬県下の教育現場に支えられてきた当社は、群馬を代表して戦う「群馬クレインサンダーズ」のオフィシャルプラチナパートナーとして、少しずつ群馬県に恩返しができるような活動にも力を入れていきたいと考えております。