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「彩る経営」で、
群馬と世界をつないでいく
株式会社アサヒ商会
代表取締役社長
広瀬 一成
群馬県高崎市出身。慶應義塾大学卒業後、物流業界でのキャリアを経て2009年に家業に参画。現在3代目社長に就任。現在オフィス環境のDXなど、文具小売の分野を越えた多角的な事業展開を推進している。
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「彩る経営」で、群馬と世界をつないでいく
株式会社アサヒ商会 代表取締役社長社長
広瀬 一成
群馬県高崎市出身。慶應義塾大学卒業後、物流業界でのキャリアを経て2009年に家業に参画。現在3代目社長に就任。現在オフィス環境のDXなど、文具小売の分野を越えた多角的な事業展開を推進している。
老舗が見出した「3つの文房具の価値」
アサヒ商会は、戦後に曾祖母が高崎市の街なかで始めた小さな文具店からスタートし、70年以上にわたり地域に根ざして成長してきました。現在では、文具やオフィス家具の提供を超え、オフィス空間のDX(デジタルトランスフォーメーション)を通じて業務効率と快適性を向上させるサービスを展開しています。群馬という地の利を活かしながら、ITソリューションや新しい働き方の提案にも力を入れています。
私が、当時父が経営していたアサヒ商会に入社したのが2009年。入社して半年で代表取締役に就任することになります。当時、売上はピークの17億円から10億円を切るほどに低迷、リーマンショックの影響も重なり、経営は厳しい状況でした。会社の未来を憂いながらも、まずは現状を変えるために、自社の改革に着手する決意をしました。
売上が低迷していた当時に私がまず取り組んだのは、小売事業のリニューアルです。昔からやっていた事業ですので、事業コンセプトやターゲット層、新規で事業を起こすのであれば考えるようなことは、特にやっていません。それでもうまくいっていた時期はありましたが、当然変えなければいけない時期になっていました。そこで、不明瞭であった事業コンセプトやターゲット層、自分たちが直近でやるべきこと…それらをすべて言語化し、整理整頓しました。そして「このお店は誰のために、何をどう提供していくべきなのか」をしっかりと追求していくと、必然的に”文房具の価値”が見えてきたのです。1つ目は「記録するためのツール」、2つ目は「コミュニケーションのためのツール」そして3つ目が「生活を彩るためのツール」です。これらの要素をいかにお客様にとって魅力的に紹介していくかを研究していきました。商品を『ただ売る』のではなく、時代に合わせて、選ぶ楽しさを演出する店づくりを意識したわけです。当時の社内からすると入社してきたばかりの若社長が言い出してきたキテレツな改革でしたので社員からの反発はありましたが、おかげで個人客が増え、今では4店舗も展開できるようになりました。会社を支える欠かせない事業となっています。
今もつねに探している「お客様にとっての意味」
経営において大切なのは、社員と会社が共に成長し続ける環境を作ることです。私はリーマンショック後、社内の文化や体制を見直し、社員が自ら挑戦し続けられる仕組みづくりに注力しました。例えば業務効率化のため、文具屋ではありますがデジタルツールを積極的に使い、ペーパーレスやIT化を進め、その経験をもとに地域企業へもDX支援を提供しています。そのおかげもありまして、経済産業省のDX認定も群馬県内では2番目、中小企業としては県内初の認定企業になりました。
新しいプロジェクトを進める際には「お客様の立場に立って考える」ことを大切にしております。ついつい売り上げ目標や利益、簡単にできるかどうかなど、売り手の都合で仕事に取り組んでしまいがちですが、大切なのはそれが「お客様にとって何の意味があるか」です。仕入先のメーカーなどから「これ儲かるのでやりましょう!」と言われることもありますが、お客様の立場にたって過剰なモノやサービスは提案しないようにしています。もちろん決めるのはお客様ですから、様々な提案は行いますが、大事なのはそこですね。
アサヒ商会の目指す世界
これから目指していくのは「ホールディングス化」、そして「経営者の創出」です。Hi-NOTE、Officemo、群馬高崎オフィスづくり.com…各事業はそれぞれ色をより鮮やかにしながら大きくなってきています。それこそ、1事業として1つの会社という器に収まらないくらいに。今後はそれぞれの事業を独立させ、各分野の専門性を最大限に高め、より自由な環境でさらに大きくしてほしいと考えております。
そのためには、各事業、もとい会社を牽引するような人材を育てなければなりません。人は「役割と責任を与えられる」ことによって初めて大きく成長できる、と私は考えています。組織のなかで重要なポジションを与えられることによって、ものごとの捉え方や自分に対する律し方などがガラッと変わるんです。ですので、外部のトレーニング研修なども設けていますが、基本としてなるべく現場に意思決定の権限を委譲することを意識しています。可能な限り現場に重要な役割を担ってもらい、会社を引っ張っていく存在を育てる土壌づくりを日々続けている状況です。
それと同時に、社員をはじめとした今働いている若い方々に伝えたいのは「面白がることにうまくなろう」ということです。ある意味、人生はたまたま与えられた80年間をどう過ごすかというゲームであり、その80年を、どう過ごすかがキモなわけです。仕事をミニマムに効率化して、余暇を全力で楽しむという方向性も、別に悪いことだとは思いませんが、仕事の時間すら楽しんだほうが得じゃないですか。少なくとも1日8時間は会社のなかにいるわけですから、仕事の主導権を自分の方向へ持っていって、つねに面白がらないともったいないな、と感じるわけです。これは仕事中だけでなく、プライベートも同様だと考えています。仕事中の自分も、家でゆっくりしている自分も、1つの人格から生まれ出てくるものですから。
実は、群馬は都会よりも「自分に正直になれる場所」だとつくづく思っています。子供の参加しているサッカーチームにいるコーチが、実は自分のお客様だったというように、仕事とプライベートの境目が「あいまい」なんです。もちろんこれにフィットしない方もいるかもしれませんが、最大限ナチュラルに仕事・生活ができるストレスフリーな環境だと思います。プライベートと会社を分ける、都会的な働き方に疲れたなと感じたら、ぜひ群馬の生活を考えてみてほしいですね。
私たちは“彩り”をテーマに、オフィス環境や働き方をデザインする企業としてさらに成長したいと考えています。そして、素敵なオフィスや働き方をする企業が増えて「群馬で働くって、なんかいいよね」と言われるような地域になることに結びつけば、最高の結果ですね。群馬の「あいまいさ」、つまり東京まで1時間という利便性と、自然の豊かさの調和が、私たちの事業にも良い影響を与えています。アサヒ商会はこの地域をさらに魅力的にし、そこで働く人々にとってより良い未来を提供できるよう挑戦を続けます。今後も、地域の企業と手を取り合い、働き方改革の先導者として道を切り拓いていきたいと考えています。